言葉の資産集に「破壊的な質問力」という言葉を入れている。良い質問は一撃で場の前提を壊し、議論を前に進める。そういう意味で使っている。
物騒な形容詞だと自分でも思う。だが、壊しているのは人ではない。壊すのは、その場にはびこっている前提のほうだ。今回は、この物騒な言葉の源流をたどる。
武器が質問しかなかった
2009年から2026年7月までのXの過去投稿を振り返ると、質問という言葉が最初にまとまって現れるのは、社会人になった2009年である。社会人に必要な力を列挙したリストに「質問力」と書き、秋には「本社に行って質問力を養った」と書いている。新人の私には、経験も、技術も、実績もなかった。会議で出せるものが質問しかなかったのだ。
同じ年の暮れに、論文の受け売りをひとつ書き留めている。質問は分からない人がするものではなく、分かる人ができるものである、と。その2週間後、受け売りが自分の言葉に変わった。
質問は、質問する人を表現する。
— 近藤雄貴 (KONDO Yuki) (@konpan) December 6, 2009
17年前の一行だが、いまでもこの通りだと思っている。何を聞くかで、その人がどこまで考えているかが露呈する。質問は攻撃の道具である前に、まず自己紹介なのだ。
100回のなぜ
質問が前提を壊す道具だと確信したのは、SEの現場で「なぜ」を重ねる仕事を続けたからだ。いわゆるなぜなぜ分析である。トラブルが起きるたび、なぜを繰り返して真因まで潜る。レビューでなぜなぜを問い続けて、設計の穴を塞ぐ。若手のなぜなぜ分析を添削する「なぜなぜ添削マン」を名乗っていた時期もある。
この職業病が、現場の外で火を噴いたことがある。自宅を建てているときに、ハウスメーカー側でトラブルが起きた。
自宅建築のことで、HM責のトラブル発生。100回くらい質問して、一緒に深掘。再発防止策を打った。補償内容が未決なので、まだまだ続く。本業が役立つわな。
— 近藤雄貴 (KONDO Yuki) (@konpan) November 6, 2021
この時は、最新の設計図面ではなく、古い設計図面で鋼管杭(家を地面の下で支える鉄の杭)が打たれたという内容だった。事件である。
2時間以上、質問だけをし続けた。責めたのではない。「対策します」という言葉の前提を一つずつ壊して、何が起きて、どこで検知できず、次はどう防ぐのかを、相手と一緒に組み立て直した。前提が壊れた場所から、議論は前に進み始める。
相手から見れば、2時間の質問は詰問されているのと同義だったかもしれない。それでも、問い続けたのは、相手を追い詰めたかったからではない。同じ悲劇、同じ被害を被る人を減らしたいという一心である。質問は詰問と違い、答える側を同じ立場に立たせる。同じ船に乗せることができる。詰問は目の前の相手に向かい、質問はまだ見ぬ次の誰かに向かう。
使える問いの型
型もある。2020年に自分で整理した、問題発見のための問いのリストだ。
【問題発見力の鍛え方】
— 近藤雄貴 (KONDO Yuki) (@konpan) August 13, 2020
・問題の本質は何か?
・その問題が大きくなるとどんな影響があるか?
・自分が当事者ならどう判断、アクションするか?
・その判断は本質を捉えているか?
・当事者に質問するなら、どんな質問をするか?
※理想、あるべき姿と現実とのGAPが問題
なぜなぜが前提を壊す問いだとすれば、前提の扱い方を変えた問いもある。昔から使っている問いが、他に二つある。ひとつは「他には?」。レビューや1on1で、答えが1つ出たときに使う。出てきた答えを一度受け止めてから他には?と重ねると、考えの浅い層が剥がれて、二層目が出てくる。
もうひとつは「ここは無人島です。さぁて何をします?」。部下が指示待ちになったときに使う。自分で考えない部下に前提ごと場面を変えて渡す問いで、答えではなく考え始める瞬間をつくりたいときに出す、手持ちの引き出しの1つだ。
自分で考えさせるためには、どうしたらいいか?強制的に追い込むしかない。考えなって言って考えられるなら良いけど。おれは無人島行ったらどうする?って質問するな。ここは無人島です。さぁて何をします?と。
— 近藤雄貴 (KONDO Yuki) (@konpan) December 7, 2018
職場なんて無人島じゃないんだからイージーゲーム。
— 近藤雄貴 (KONDO Yuki) (@konpan) December 7, 2018
いまサッカー日本代表を率いる森保監督が、対話を必ず相手への質問で始めることをテレビで知って、メモしたのは2016年である。良い質問は、立場が上がるほど効く。
問いを立てる人だけが残る
2022年には、「問いを立てる」ことが物事を進める上で最も重要だと書いた。
「問いを立てる」ってのが物事を進める上で最も重要。問いがなければ答えが出ない。意見も出ない。
— 近藤雄貴 (KONDO Yuki) (@konpan) February 9, 2022
2023年にGPT-4に衝撃を受けたとき、私は「問いを立てられるかが差になる」と書いた。
GPT-4の衝撃。どんどん相対的にフィジカルの重要性が増してるわ。そして、問題にいかに気づけるか。問いを立てられるか。これらが差になる。
— 近藤雄貴 (KONDO Yuki) (@konpan) March 15, 2023
3年経って、その通りになっている。答えはAIがいくらでも出してくれる。だからこそ、出てきた答えの前提に違和感を覚え、一撃で壊し、次の問いを立てられる人が強い。
AI時代はツッコミ力が試される。違和感に気づけるか。推論して出てきた答えに、ツッコミできるか、次の問いが立てられるかが一つの分野のスキルや実力を測る指標になる。
— 近藤雄貴 (KONDO Yuki) (@konpan) April 10, 2026
2022年に書いたときより、いまのほうがこの言葉は切実だ。
言葉の源流をたどると、今回もまた現場に行き着いた。武器が質問しかなかった新人が、なぜを100回重ねる仕事で言葉を研ぎ、破壊的な質問力という物騒な言葉を資産集に入れるに至った。壊すのは前提、進めるのは議論。質問は、いまも私を表現している。